美術史を通して学ぶイタリア語コース 2
6日目:
9時半に教室で会うと、Mさんは楽しかった週末の出来事について話しをしてくれた。自分でも色々な見学をしたようだ。今日はサンタクローチェ教会に行く予定にしている。ここは学校のすぐ近くというわけでもないので、暑い中慌てなくてもいいように早めに学校を出る。サンタクローチェ教会も大きい教会なので見るところはたくさんある。まず初めに手短に教会前の広場とこの周辺地区について話してから中に入る。中ではまずフランチェスカーニ派と教会の歴史について話し、ここで目にするものを言葉に置き換えて行く。Mさんは勉強した専門用語なども立派に駆使して教会を描写していた。サンタクローチェ教会は、ミケランジェロ、ガリレオ、マキャベリ、アルフィエリ、フォスコロ、ロッシーニなどの有名な知識人のお墓があることでも知られている。これらを全て見て回り、そこに眠る著名人について語り合ったあと、絵画の見学をする。特にジオットとそのムーブメントについて。サンタクローチェ地区はアルノ川から近くフィレンツェで一番低い土地にあるため、この教会は1966年のアルノ川の氾濫の際に大きな損害を受けた。特にチマブエの十字架にはその傷跡が大きく残ったことは有名である。あっという間に時が経ち、次にブルネッレスキの名作であるパッツィ家礼拝堂に向かう。今日の見学はここまでとなりMさんはお待ちかねのご主人と一緒にお食事へ。明日は今までの見学をよく消化するため、教室での授業を行う予定。
7日目:
今日は体力的にはちょっと楽な一日。でも今までのまとめと復習、そして明日からの見学の準備に費やした、とても大切な授業となった。明日はバルジェッロ美術館に行き、主に彫刻を見学する。Michelangelo, Cellini, Giambologna, Ammannati, Desiderio da Settignano, Donatello, i Della Robbia, Brunelleschi e Ghiberti について話し合う。
8日目:
いつも通り学校で待ち合わせるが、バルジェッロ美術館までは徒歩で20分かかるし、また予約時間は10時なのでほぼすぐに学校を出発する。サンタ トリニタ広場で待っていたMさんのご主人と一緒にバルジェッロ美術館へ向かう。今日は彼も見学に参加する予定だ。
美術館は、収容されている作品だけでなく建築自体もとても美しい。たくさんのコレクションがあるが、我々は1400年代と1500年代の彫刻作品に集中して見学する。Mさんの好きな芸術家が多くとても興味を持って見学していたので全ての時間を使って作品について話し合う。ご主人はイタリア語を話さないが忍耐強く12時45分までの我々の見学に付き添っていた。
9日目:
今日はMさんのご主人もお待ちかねの、ウフィツィ美術館へ行く日である。この時期のウフィッツィ美術館はいつもにも増して混雑しており、予約なしで見学することはほぼ不可能と言える。もちろん我々は十分な余裕を持って予約しており、混雑を避けて朝8時45分からの時間をとっていたのだが、これは大正解。もちろん一番乗りというわけではないがそれほど多くの人はいなかった。入り口での荷物検査などを通過した後、ようやく中に入る。ウフィッツィの見学は午前中いっぱいを予定しており、教室で勉強したムーブメント、主だった芸術家の作品が年代順に鑑賞できる。夢中になって鑑賞している間にあっという間に時間は過ぎ、気がついたら授業の終了時間となっていた。Mさんは授業時間の後も残って、時間の都合で見学できなかったところを見学したり、テラスからの素晴らしい眺めを楽しみたいということだったので、今日はここで解散とする。
10日目:
コース最終日の今日はサンマルコ美術館に行くことになっている。Mさんはまだ見学をしたことがなく、そしてBeato Angelicoが大好きだということで、たってのご希望であった。サンマルコはウフィッツィほど観光客が多いわけではないが、念のため予約は入れておいた。美術館は学校から徒歩で20分程度はかかるので早々に向かう。歩きながらMさんは昨日のウフィッツィ見学で特に良かった作品について語ってくれた。彼女のイタリア語は本当に上達していて驚く。語彙の量がとても増えたし、今までよりリラックスして自信を持ってイタリア語を話しているようだ。
予約時間ぴったりの美術館に着くと、特に行列はなかったのですぐに入ることができた。Angelicoの作品を前にして、Mさんは本当に感動しているのがわかった。今まではずっと本でしか見たことがなかったものの本物が目の前にあるのだ。Mさんは今回の旅行で見たいと思っているAngelicoの作品のリストを日本で用意していて、それを見せてもらったが、本当にたくさんの作品がリストにあげられていた。今日は彼女にとって本当に大切な日なのだということがわかる。全てをゆっくり見学した後、ブックショップでサンマルコ美術館に関する本を買い求めるMさん。もちろんイタリア語で書かれたものだ。
とうとうお別れの時がきてしまった。お互いにとってとても素晴らしいコースになったと思う。Mさんはたくさんのことを学び、期待していた通りイタリア語とイタリア美術にどっぷりと浸る日々を過ごした。私はMさんのように情熱と興味を持っている方に授業ができたことが何よりの喜びだった。